
チョコレートの風味は焙煎だけで決まるわけではありません。カカオ豆の収穫後に行われる発酵工程が、風味の基礎を作ります。発酵がうまくいかないと、どれだけ丁寧に焙煎しても風味が出ません。
01 発酵の仕組み
カカオの実を割ると、豆の周りに白い果肉(パルプ)があります。この果肉に含まれる糖分を微生物が分解することで発酵が起きます。発酵中に温度が上がり、豆の内部で化学変化が起きて、チョコレートの前駆体となる化合物が生成されます。
発酵期間は産地によって異なりますが、一般的に5〜7日間です。発酵が短すぎると酸味が強くなりすぎ、長すぎると腐敗につながります。この管理は産地の農家が行うもので、ビーントゥバーの製造者はその結果を受け取ることになります。
02 発酵後の乾燥
発酵が終わった豆は乾燥させます。乾燥が不十分だと輸送中にカビが生えます。乾燥方法も産地によって異なり、天日乾燥が一般的ですが、雨季には機械乾燥を使う産地もあります。
Script Nestに届いた豆は、まず水分量を確認します。水分が多い豆はカビのリスクがあるため、その年の仕入れを見直すこともあります。
03 発酵による風味の違い
ペルー産のナッツ感、マダガスカル産の果実味のある酸味は、それぞれの産地の発酵方法と気候の違いから来ています。同じ産地でも収穫年によって発酵の状態が変わるため、毎年同じ風味になるとは限りません。
これが、テイスティングノートカードに収穫年を記載している理由です。同じペルー産でも、2024年産と2025年産では風味が違います。年ごとの変化を楽しんでいただけると、チョコレートの見方が変わるかもしれません。
04 品質が低下した年への対応
発酵や乾燥の状態が悪い豆が届いた年は、その産地のチョコレートを休止することがあります。供給量より品質を優先するという判断です。過去にも、ある産地の豆の状態が良くなかった年に、その産地の販売を1シーズン休止したことがあります。
カカオ豆の発酵は、チョコレートの製造者がコントロールできない部分です。だからこそ、豆の状態を毎年確認することが製造の出発点になります。